Monthly Archives: 1月 2016

お元気なうちに相談してほしい,相続の相談②

今回は,私が「是非ともお元気なうちに弁護士に相談してほしい」と強く思うケースの2つ目をご紹介いたします。

2つ目は法定相続人がいないケースです。

稀に相続に関する法律相談で,実は相談者が相続人にはあたらず,他にも法律上相続人にあたる方がいないことがあります。

例えば,いとこであったり,義理のきょうだい(兄弟姉妹の配偶者)が亡くなられたというような場合です。相談者にとっては身近な親戚という意識で,親戚だから当然相続人になるのだと思っていらっしゃったことが多く,相続人にはならないことを告げると大変に驚かれます。

自分が相続人ではないと分かると,次に「では誰が相続人になるのか」という疑問が当然に出てくることになります。これに答えるためには被相続人の戸籍関係を調査するなどしなければなりません。

戸籍を調査しても相続人にあたる方がいないとなると,相続人不存在となります。本来相続権の無い者まで相続人の範囲が拡げられるということはありません。相続人不存在の場合,相続財産は家庭裁判所が選任する管理人の管理下となり,債務の弁済などを行った後で最終的には国庫に帰属することになります。かなり長期間に渡る法的手続が必要となりますし,財産は結局国のものになります。

相続人ではなくとも,被相続人と一緒に暮らしていた方や,老後のお世話をされていた方は,家庭裁判所に特別の縁故のある者として認められれば,相続財産の分与を得ることができます。しかし特別縁故者への分与が認められるのは,相続財産の一部分であることが多いです。

相続人不存在の事件では,多額の相続財産が国へと流れていく事例が多く,率直にもったいないように感じます。

また誰も特別縁故者として認められないケースであれば,損得勘定で考えると誰も相続人不存在の事件に関わるメリットがないことになりますので,被相続人の相続財産が放置されがちとなる問題もあるでしょう。

被相続人に相続人がいない場合でも,遺言をのこしておけば,遺言書の内容に沿って財産を処分すべきこととなります。相続人がいない方には,「相続人不存在」の状態となることを避けるべく,今すぐにでも遺言を活用して頂きたいところです。

 

お元気なうちに相談してほしい,相続の相談①

当事務所では,相続に関する御相談もこれまで多数取り扱って参りました。

多くの場合,相談者の方は亡くなられた方の御遺族や御親戚の方であり,亡くなられるまでは相続の問題について考えておられず,実際に相続が始まってから相談に来られています。(法律では亡くなられた方のことを「被相続人」といい,法律上相続する権利を有する方のことを「相続人」といいます。)

たしかに相続は亡くなられた後の話です。被相続人はお元気なうちは,なかなか相続について現実味をもって考えませんし,生前から相続人が財産の分け方についてあれこれ話をするのは気が引けるものです。

しかし弁護士の立場からすると,生前にもう一歩踏み出して,御相談に来られるなり,対応を検討して頂ければ,より円満で妥当な結果を導くことが出来たのにと思うケースも度々あります。

私が「是非ともお元気なうちに弁護士に相談してほしい」と強く思うケースの1つは『法定相続分通りの相続をすべきでない』ケースです。

「すべきでない」というのは,あくまで私の主観的な評価ですが,個々の事情によっては法定相続分通りの遺産分割が適さないケースがあります。例えば様々な事情から何十年も連絡さえ取っていない子Aと,人生の大半を同居して過ごし老後も心身を支えてくれた子Bがいる場合に,法律上は同じ「子」にあたるわけですが,遺産分割において両者を等しく扱うべきでしょうか。一般的には子Bがより多くを相続するべきと考えるのが人情であるように思います。

このような事例では,被相続人(親)も子Bを優遇したいと思っていることが多いのですが, その「思い」だけでは相続の結果に反映させることができません。法律上は,遺産分割の際に被相続人の財産への貢献度を考慮する「寄与分」という考え方もあるにはあるのですが,いざ紛争が生じた場合に,期待した通りの寄与分を裁判所に認めてもらうことはなかなかできません。

やはり被相続人が生前に遺言を書くなり,生前贈与をするなりしておく必要があります。

また相続財産の中に不動産がある場合は,将来処分する可能性などを考えると,法定相続分通りに相続人間での共有とするよりも,相続人の一人の単独所有とする方が望ましいでしょう。

相続に関する紛争が生じてしますと,当事者の方々は精神的にとても疲弊することになりますし,誰もが納得した解決をすることも難しいです。自分自身や親の相続が発生した場合に,法定相続分通りに相続することで,果たして相続人間で問題が生じないだろうかという点について,是非とも一度考えて頂きたいと思います。

そして不安があるのであれば,最終的な決断ができなくとも一応の遺言書を作成しておくべきでしょう。

遺言は何度でも作り直すことが出来ますので,考えが変われば,また新しい遺言書を作成すればよいのです。

マイナンバー導入のポイント(中小企業や個人事業主向け)

平成28年1月から、いよいよマイナンバーの利用が始まりますが、中小零細企業や個人事業主の方々は、日常業務に手を取られ、なかなかマイナンバーについて詳しく知る機会がないと思います。

そこで、以下では内閣官房のホームページを参考に、必要最小限のポイントに絞って、まとめたいと思います。

 

1、取得に関するポイント

①マイナンバーの取得の際にはあらかじめ利用目的を特定して通知または公表することが必要です。

(利用目的特定の例)

「源泉徴収票作成事務」「健康保険・厚生年金保険届出事務」

(通知または公表の例)

従業員へのメールや掲示など

②本人確認はなりすまし防止のためにマイナンバーの確認と身元の確認を厳格に行ってください。

個人番号カードがあれば、一枚でマイナンバーと身元の確認ができます。

個人番号カードを取得していない場合には、通知カードでマイナンバーを確認したうえで、免許証などで身  元の確認が必要です。

 

2、利用・提供に関するポイント

①法律で定められた税と社会保険の手続きに使用する場合を除き、マイナンバーを利用・提供することはでき ません。

②社員番号や顧客管理番号としての利用は、仮に社員や顧客の同意があってもできません。

③個人番号カードの裏面にはマイナンバーが記載されますが、法律で認められた場合以外で、書き写したり、コピーを取ったりすることはできません。

 

3、保管・破棄に関するポイント

①マイナンバーは必要がある場合(翌年度以降も雇用が認められる場合や保管義務期間が決まっている場合)だけ保管が認められます。

②必要がなくなった場合や保存期間が経過した場合、マイナンバーを破棄または削除するというルールを取扱い担当者に浸透させてください。

③破棄や削除を前提に、書類やデータのファイリングの仕方などを工夫してください(年ごとにファイルするなど)。

④破棄や削除は、シュレッダーでの破棄やマイナンバー部分を復元できないよう削除するなど工夫してください。

 

4、安全管理措置に関するポイント

①従業員が数名という小規模な事業者に情報管理の電子化など必要以上の取組みを求めるものではありません。

②取扱担当者以外の人からむやみに見られることがないよう工夫してください(別室、パーテーションで区切るなど)

③パソコンで管理する場合にはウイルス対策ソフトの導入・更新、アクセスパスワードの設定を行ってください。紙で帳簿等を管理している場合には、鍵付の引き出しや棚に保管してください。

5、情報漏えいに関して

①過失によってマイナンバーが漏洩した場合、罰則はありません。刑事罰があるのは故意に漏洩した場合です。

②過失によって漏洩した場合でも、民事上の責任や、企業としての信頼低下の恐れがあります。

 

6、マイナンバーの提供を断られた場合

①社会保障や税の決められた書類にマイナンバーを記載することは法令で定められた事業者の義務です。もっとも、マイナンバー法では、従業員に提供を強制できる規定や罰則はありません。

②マイナンバーの記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないことはありません。

③提供を求めた経過などを記録・保存するなどして、事業者が収集を怠ったわけではないことを明確にしておきましょう。

 

以上が最低限必要と思われる知識です。

詳しく知りたい方は、内閣官房のホームページで最新情報をチェックすることをお勧めいたします。