Daily Archives: 2016年1月14日

お元気なうちに相談してほしい,相続の相談①

当事務所では,相続に関する御相談もこれまで多数取り扱って参りました。

多くの場合,相談者の方は亡くなられた方の御遺族や御親戚の方であり,亡くなられるまでは相続の問題について考えておられず,実際に相続が始まってから相談に来られています。(法律では亡くなられた方のことを「被相続人」といい,法律上相続する権利を有する方のことを「相続人」といいます。)

たしかに相続は亡くなられた後の話です。被相続人はお元気なうちは,なかなか相続について現実味をもって考えませんし,生前から相続人が財産の分け方についてあれこれ話をするのは気が引けるものです。

しかし弁護士の立場からすると,生前にもう一歩踏み出して,御相談に来られるなり,対応を検討して頂ければ,より円満で妥当な結果を導くことが出来たのにと思うケースも度々あります。

私が「是非ともお元気なうちに弁護士に相談してほしい」と強く思うケースの1つは『法定相続分通りの相続をすべきでない』ケースです。

「すべきでない」というのは,あくまで私の主観的な評価ですが,個々の事情によっては法定相続分通りの遺産分割が適さないケースがあります。例えば様々な事情から何十年も連絡さえ取っていない子Aと,人生の大半を同居して過ごし老後も心身を支えてくれた子Bがいる場合に,法律上は同じ「子」にあたるわけですが,遺産分割において両者を等しく扱うべきでしょうか。一般的には子Bがより多くを相続するべきと考えるのが人情であるように思います。

このような事例では,被相続人(親)も子Bを優遇したいと思っていることが多いのですが, その「思い」だけでは相続の結果に反映させることができません。法律上は,遺産分割の際に被相続人の財産への貢献度を考慮する「寄与分」という考え方もあるにはあるのですが,いざ紛争が生じた場合に,期待した通りの寄与分を裁判所に認めてもらうことはなかなかできません。

やはり被相続人が生前に遺言を書くなり,生前贈与をするなりしておく必要があります。

また相続財産の中に不動産がある場合は,将来処分する可能性などを考えると,法定相続分通りに相続人間での共有とするよりも,相続人の一人の単独所有とする方が望ましいでしょう。

相続に関する紛争が生じてしますと,当事者の方々は精神的にとても疲弊することになりますし,誰もが納得した解決をすることも難しいです。自分自身や親の相続が発生した場合に,法定相続分通りに相続することで,果たして相続人間で問題が生じないだろうかという点について,是非とも一度考えて頂きたいと思います。

そして不安があるのであれば,最終的な決断ができなくとも一応の遺言書を作成しておくべきでしょう。

遺言は何度でも作り直すことが出来ますので,考えが変われば,また新しい遺言書を作成すればよいのです。